プラスチック、海上コンテナで輸出入されている その2
プラスチックは、使われているときより捨てられた後のほうが、
ほんとうは途方もなく永いときを有する。
特に、歳月と科学技術で築き上げてきたプラスチック製品を、
これからの未来にどう使うか、役立てるか。
きちんと答えを出すには、先見性と人類の英知が必要だ。
経済成長と持続可能な地球環境への取り組みの両立には、課題が山積している。
プラスチックの使い方で、
地球環境の未来が決まるかもしれない。
今時点において、他の素材では代替ができない機能性と経済性を持つプラスチック。
より便利なプラスチック製品、暮らしがより豊かになるプラスチック製品、
長期にわたって分解せずに地球に残されていくプラスチック、
地球環境のために、
自然への敬意のために、
日々の生活の中で、自らプラスチック製品と向き合う機会をつくってみてはどうだろう。
大切な地球環境を守り、持続可能な未来へ引き継いでいくために。
INDEX
■目次
その1
1. プラスチックとは何か?
2. サーキュラーエコノミー 循環型経済
3. プラスチックごみをリサイクルする方法
4. 日本のプラスチックごみのリサイクル
5. 日本において、プラスチックはどのようにリサイクルされているのか?
その2
6. プラスチックごみの輸出
7. 中国におけるプラスチックごみの問題
7. バーゼル条約 Basel Convention
9. 廃棄物の輸出入
10. 行き場を失い表面化したプラスチックごみの輸出国と輸入国の課題
11. 数字で読む海洋プラスチックごみ
12. 自然界へ流れ出すプラスチックごみ
その3
13. SDGs 持続可能な開発目標
14. 海洋プラスチックごみの問題
15. 用語表 プラスチックごみの事を考える時のキーワード
16. まとめ
プラスチックごみの輸出
2017年、中国がプラスチックごみの輸入禁止を発表した。
2016年までは、世界で排出されるプラスチックごみの45%を引き受けていた。その合計数量は713万トン。中国は、日本から輸入するプラスチックごみの量が最も多く、次いでアメリカ、ドイツ、ベルギー、オーストラリア、カナダなどの先進国から輸入していた。プラスチックの消費量が多い国は、回収したプラスチックごみの処理を中国に任せていた。
2016年に中国にて製作された「プラスチックチャイナ(PLASTIC CHINA)」というドキュメンタリー映像作品は、中国が抱えるプラスチックごみの処理問題を描き話題となった。
2018年以降、従来中国へ向かっていた大量のプラスチックごみは、受け入れ先を求め、アセアンへと向かった。マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピンなどは、急増するプラスチックごみの輸入に対し危機意識を持ち、次々とプラスチックごみの輸入を規制した。
その結果、日本においては、プラスチックごみの輸出量が減少した。2019年は約90万トン、2020年は約80万トン。2017年当時と比較すると、プラスチックごみの輸出量は半減した。
中国におけるプラスチックごみの問題
2018年から、中国はプラスチックごみの輸入禁止を実施している。
1980年代、中国は改革開放政策によって、沿海地域に保税区や輸出加工区などの経済特区を建設し、外資を積極誘致することで工業化を進めた。1990年代、上海(Shanghai)、深セン(Shenzhen)、青島(Qingdao)、大連(Dalian)などは、都市化が進み土地代などのインフラコストや人件費が上昇していった。2000年代は、都市部から200~600キロメートル離れた都市部の周辺地域へ工業団地が建設され、更なる経済成長を築き、「世界の工場」と称されるほど様々な工業製品を生産していた。
製品の原材料となるプラスチックの需要が生まれた。石油を由来とするプラスチックをつくるには石油プランンを必要としたが、プラスチックごみを原材料とした方が、効率よくプラスチックを再生できた。そのため、中国は積極的に日本や欧米などのプラスチック消費国から、プラスチックごみを輸入した。輸入したプラスチックごみを資源として、プラスチック製品を生み出し、諸外国へ輸出した。
輸入されたプラスチックごみは、100%安全で完全に資源化できるとは限らない。誘拐物質を含むもの、仕分け作業によって分別しきれないものもあった。処理しきれないごみは、放置され、焼却されることによって、有害物質が河川に流れ、環境汚染や水質汚染を招いた。その結果、2017年に中国はプラスチックごみの輸入禁止を発表した。
輸入していたプラスチックごみの問題には対策をとったが、中国は新たな局面を迎えている。今日、世界でも最大規模の超大国となった中国は、世界でも有数のプラスチックの生産および消費国となり、国内で廃棄される大量のプラスチックごみの対策が新たな課題として浮上している。
バーゼル条約 Basel Convention
プラスチックごみの輸出入は、国際条約であるバーゼル条約によって規制されている。
経済産業省のホームページの内容を基に作表した。
バーゼル条約
項目 | 内容 |
---|---|
正式名称 | 有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約 |
目的 | 有害廃棄物及び他の廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制について、国際的な枠組みを定め、これらの廃棄物によってもたらされる危険から人の健康及び環境を保護 する |
概要 | 有害廃棄物等を輸出する際の輸入国・通過国への事前通告、同意取得の義務付け、 非締約国との有害廃棄物の輸出入の禁止。 不法取引が行われた場合等の輸出者による再輸入義務。 規制対象となる廃棄物の移動に対する移動書類の携帯義務等 |
バーゼル条約とは、外務省ホームページによると、 以下の通りである。
【以下引用】
バーゼル条約
Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and their Disposal
背景
(1)有害な廃棄物の国境を越える移動は1970年代から欧米諸国を中心にしばしば行われてきた。1980年代に入り,ヨーロッパの先進国からの廃棄物がアフリカの開発途上国に放置されて環境汚染が生じるなどの問題が発生し,何等の事前の連絡・協議なしに有害廃棄物の国境を越えた移動が行われ,最終的な責任の所在も不明確であるという問題が顕在化した。
(2)これを受けて,OECD及び国連環境計画(UNEP)で検討が行われた後,1989年3月,スイスのバーゼルにおいて,一定の有害廃棄物の国境を越える移動等の規制について国際的な枠組み及び手続等を規定した「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が作成された(1992年5月5日効力発生。2019年12月現在,締約国数は186か国,EU及びパレスチナ)。
(3)我が国は,リサイクル可能な廃棄物を資源として輸出入しており,条約の手続に従った貿易を行うことが地球規模の環境問題への積極的な国際貢献となるとの判断の下,1993年9月17日に同条約への加入書を寄託し,同条約は,同年12月16日に我が国について効力を生じた。
第14回(2019年4月~5月 ジュネーブ(スイス))
バーゼル条約の規制対象物資への「汚れたプラスチックごみ」の追加,ロッテルダム及びストックホルム条約への規制物質の追加の採択
バーゼル法
項目 | 内容 |
---|---|
正式名称 | 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律 (平成4年法律第108号) |
目的 | バーゼル条約の的確かつ円滑な実施を確保するため、特定有害廃棄物等の輸出、輸入、運搬及び処分の規制に関する措置を講じ、もって人の健康の保護及び生活環境の保全に資する |
概要 | 特定有害廃棄物の外為法による輸出入承認、条約に基づく移動書類の携帯、環境大臣及び経済産業大臣による回収・処分等の措置命令等を規定 |
9.廃棄物の輸出入
諸外国がプラスチックごみを自国に流入してくることを防ぐため、廃棄物の輸入を厳しく規制している。しかし、日本から諸外国への輸出が、完全に禁じられているわけではない。
2021年1月1日以降、バーゼル条約及び日本の外為法の手続き、および必要に応じて相手国の輸入許可手続きを行えば、日本から諸外国へ輸出する事はできる。
バーゼル条約が、プラスチックの輸出に効力が生じるまでの制度改正
海上コンテナにプラスチックごみを積めて輸出をする際には、コンテナへの積み方にも配慮を要する。例えば、
プラスチックごみを固定するためにPPバンドを使用した際、バーゼル条約の規制の対象となるか?
プラスチックごみを、PVC(ポリ塩化ビニール)製のフレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ=Flexible-Container-Bag)またはFIBC(Flexible Intermediate Bulk Containers)に詰めて、コンテナに積載した場合、フレコンバッグは規制の対象となるのか?
このような場合には、梱包材とみなしバーゼル条約の規制の対象外となる。
規制が厳格化しているが、ビジネス上輸出を計画している人は、事前に規制の内容や必要な手続きについて、環境省へ相談するのも一考だろう。
環境省のホームページによると、問い合わせの窓口は、下記の通りだ。
環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物規制課 ( E-mail: env-basel@env.go.jp )
10.行き場を失い表面化したプラスチックごみの輸出国と輸入国の課題
2018年 中国がプラスチックごみの輸入を禁止したことにより、行き場を失ったプラスチックごみが積まれたコンテナが、アセアン各国の港で急増した。事態の深刻さに築いたアセアン各国は、中国に次いで輸入規制を表明した。
2018年 マレーシアは、プラスチックごみを実質輸入禁止
2019年 インドネシアは、プラスチックごみを輸入禁止
2021年 タイは全面輸入禁止
これら3ヶ国以外では、ベトナムも輸入に規制を設けている。
フィリピンは、フィリピン政府が、カナダや韓国に対し具体的な事例を指摘している。家庭ごみがプラスチックごみの資源と偽って、カナダからフィリピンに輸入されていた。期間は、2014年から発覚までの5年間もの間、輸入され続けていた。韓国からフィリピンには、6,300トンのプラスチックごみが不正輸出され、フィリピン政府は韓国へ一部を積み戻している。
アセアン諸国においては、環境規制を順守せずにプラスチックごみをリサイクル処理する業者が横行し、河川の水質汚染が深刻化した。
これらの環境に対する汚染の状況を踏まえ、2019年にバーゼル条約が改正され、2021年から「汚れたプラスチックごみ」は、規制の対象となった。現在は、輸入国の許可がなければ、プラスチックごみは輸出することができなくなった。
11.数字で読む海洋プラスチックごみ
12.自然界へ流れ出すプラスチックごみ
2015年に世界で生産されたプラスチックは約4億トン。そのうち36%は、容器包装プラスチック。包装容器プラスチックとは、ペットボトル、流通する食品を包装する袋や容器、更にはコンビニエンスストアやスーパーマーケットのレジ袋などが相当する。
2015年にごみになったプラスチックは約3億トン。3億トンの中の47%は容器包装プラスチックだ。
2015年当時の中国は、容器包装プラスチックごみを年間40万トン廃棄していた。一方、一人当たりの廃棄量に換算すると、アメリカの年間の廃棄量が最も多く、一人あたり45キログラム、日本が次いで30キログラム以上を廃棄していた。
2015年世界でリサイクルされた容器包装プラスチックごみの14%がリサイクルされた。埋め立てや焼却された容器包装プラスチックごみを除くと、32%は河川や海に流出したと考えられている。
■河川にプラスチックが捨てられている世界のワースト5