プラスチック、海上コンテナで輸出入されている その1
プラスチックは、使われているときより捨てられた後のほうが、
ほんとうは途方もなく永いときを有する。
特に、歳月と科学技術で築き上げてきたプラスチック製品を、
これからの未来にどう使うか、役立てるか。
きちんと答えを出すには、先見性と人類の英知が必要だ。
経済成長と持続可能な地球環境への取り組みの両立には、課題が山積している。
プラスチックの使い方で、
地球環境の未来が決まるかもしれない。
今時点において、他の素材では代替ができない機能性と経済性を持つプラスチック。
より便利なプラスチック製品、暮らしがより豊かになるプラスチック製品、
長期にわたって分解せずに地球に残されていくプラスチック、
地球環境のために、
自然への敬意のために、
日々の生活の中で、自らプラスチック製品と向き合う機会をつくってみてはどうだろう。
大切な地球環境を守り、持続可能な未来へ引き継いでいくために。
INDEX
■目次
その1
1. プラスチックとは何か?
2. サーキュラーエコノミー 循環型経済
3. プラスチックごみをリサイクルする方法
4. 日本のプラスチックごみのリサイクル
5. 日本において、プラスチックはどのようにリサイクルされているのか?
その2
6. プラスチックごみの輸出
7. 中国におけるプラスチックごみの問題
7. バーゼル条約 Basel Convention
9. 廃棄物の輸出入
10. 行き場を失い表面化したプラスチックごみの輸出国と輸入国の課題
11. 数字で読む海洋プラスチックごみ
12. 自然界へ流れ出すプラスチックごみ
その3
13. SDGs 持続可能な開発目標
14. 海洋プラスチックごみの問題
15. 用語表 プラスチックごみの事を考える時のキーワード
16. まとめ
プラスチックとは何か?
プラスチックの名前は、ギリシャ語の「plastikos」に由来する。「plastikos」は、「形を作ることができる」事を意味する。天然素材の松脂やゴムを樹脂と呼ぶ。その天然樹脂に対し、石油を原料としてナフサを主原料とした物質を「合成樹脂」を、一般的にプラスチックと呼ぶ。粘土のように粘性があり形を作って固まる、この性質を可塑性という。
プラスチックは、性質によって熱硬化性と熱可塑性に分類できる。
熱硬化性プラスチックは、高温でも溶けない特性を持つ。主に、飛行機の機体、自動車、調理器具などに使用されている。溶けにくい特性は、プラスチック製品としてのメリットではあるが、リサイクルが極めて困難なために、デメリットでもある。
熱可塑プラスチックは、加熱すると軟化し、冷却すると固まる特性を持つ。柔らかくなるため加工し易いメリットがある。日常的に使用しているプラスチックは、この熱可塑性プラスチックが主流だ。
プラスチックは、主に石油を原材料としている。
プラスチックのライフサイクルは、3つのプロセスがある。
- 一.原材料から製造・加工
- 二.製品としての利用
- 廃棄や処理
原材料としての「製造・加工」は、プラスチックを作り出す工程。石油から抽出したナフサ(naphtha)を加熱分解して、プラスチックの素となる、エチレン(ethylene)やプロピレン(propylene)といった化合物を取り出す。更に加工すると、ポリエチレン(polyethylene)やポリプロピレン(polypropylene)が出来あがり、これらをプラスチックという。
このポリエチレンやポリプロピレンを扱いやすいようにペレット(pellet)とよぶ粉体や小さな固形のかたまりを生成する。
サーキュラーエコノミー circular economy 循環型経済
プラスチックのリサイクルの話題になると、サーキュラーエコノミーについて記事を目にする事や、報道などで耳にする事がある。
サーキュラーエコノミー(circular economy)とは、循環型経済の事を意味する。
例えば、日本においてペットボトルは、リサイクルされている。家庭においてもごみを分別し、大人も子供も資源ごみ回収を当たり前のように生活に取り込んでいる。コンビニエンスストアやショッピングモールのような商業施設においても、ペットボトルの回収ボックスが設置してある。回収されたペットボトルは、自治体などの施設でリサイクルされる。
飲料水のペットボトルが、焼却や埋め立てされることなく、再生されて新たなプラスチック製品に生まれ変わることを、循環型経済の一つ事例として考えられている。
2020年5月に経済産業省が公表した「循環経済ビジョン2020(概要)」によると、
循環経済とは、
「あらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、付加価値の最大化を図る経済」
循環経済の必要性
「世界的な人口増加・経済成長に伴い、資源・エネルギー・食料需要の増大、廃棄物量の増加、温暖化・海洋プ ラスチックをはじめとする環境問題の深刻化はティッピングポイントを迎えつつあり、大量生産・大量消費・大量廃 棄型の線形経済モデルは、世界経済全体として早晩立ち行かなくなる畏れ」
循環経済への転換に向けた対応の方向性①
「欧州をはじめ様々な国がサーキュラーエコノミーへの転換を政策的に推進。循環型の経済活動が適切に評価 され、付加価値を生む市場が生まれつつある。また、地球環境の持続可能性を損なう事業活動そのものが事 業継続上の重大なリスク要因とも認識されつつある」
循環経済への転換に向けた対応の方向性②
「我が国産業競争力の強化につなげるべく、①ソフトローを活用しつつ、事業者のビジネスモデルの転換を促すと ともに、こうした取組を支えるべく、②投資家など関係主体の役割・機能が発揮される事業環境の整備や③中 長期的にレジリエントな循環システムの構築を進める」
(参考)グローバルな経済社会の変化
「地球温暖化や海洋プラスチックごみ等の環境問題の深刻化と環境配慮要請の高まり
・気候変動が一因と考えられる異常気象の発生や海洋プラスチックごみによる海洋環境の悪化
( Ex. 2050年には海洋中のプラスチック量が魚の量以上に増加するとの推計 )
・環境問題に対する企業のコミットメントを求める民間主導の動き グローバル企業を中心とした自主的な取組の加速」
プラスチックごみをリサイクルする方法
プラスチックごみの処理方法として、世界ではリサイクルが推進されている。
プラスチックのリサイクルは、主に3つの方法が実施されている。
No. | 名称 | 英語表記 | 日本での名称 |
---|---|---|---|
1 | メカニカルサイクリング | mechanical recycling | マテリアルリサイクル |
2 | フィードストックリサイクリング | feedstock recycling | ケミカルリサイクル |
3 | エネルギーリカバリー | energy recovery | サーマルリサイクル |
1:メカニカルリサイクリング mechanical recycling
日本においては、「マテリアルリサイクル」と呼ばれている。プラスチックごみを原料にして、新しいプラスチックを製造する方法。プラスチックごみを洗浄および粉砕した後に、ペレット(pellet)やフレーク(flake)と呼ぶ粒状の状態に加工し、新たなプラスチック製品の再生原料となる。
EUにおいては、このメカニカルリサイクリングをリサイクル(recycling)として分類している。
2:フィードストックリサイクリング feedstock recycling
日本においては、「ケミカルリサイクル」と呼ばれている。プラスチックごみを化学的に分解し、化学原材料として再生する方法。化学反応を用いて、プラスチックごみをモノマーや原料に戻し、製鉄所にて使う高炉還元剤、コークス炉の原材料やガスなどに再利用している。
EUにおいては、リカバリー(recovery)に分類されている方法。
3:エネルギーリカバリー energy recovery
日本においては、「サーマルリサイクル」と造語で呼ばれている。プラスチックごみを焼却し、発電所の原材料として利用する方法。日本は、この「サーマルリサイクル」という造語で呼ぶエネルギーリカバリーやディスポーザルを、リサイクルと分類しているが、欧米基準、つまり諸外国の基準からは、リサイクルとは見なされない。プラスチックごみを焼却処分し、その熱を利用している事を、リサイクルとは認められていない。
EUでは、リカバリー(recovery)または、ディスポーザル(disposal)に分類される処理方法。
日本のプラスチックごみのリサイクル
理想 | 一 | 二 | 三 | 四 |
---|---|---|---|---|
Ideal | Refuse | Reduce | Reuse | Recycle |
使わない | 減らす | 再利用 | リサイクル |
現実 | 一 | 二 | 三 | 四 |
---|---|---|---|---|
Real | Useful | Reduce | Reuse | Recycle |
使う | 減らす | 再利用 | リサイクル |
日本のごみ問題は、従来から「3R運動」と言われてきた。
3R運動とは、Reduce、Reuse、Recycleの頭文字を表している。現在は、これに「Refuse」が加わり、「4R運動」が世界的に推進されている。
日本において、1990年代にリサイクルすることが、環境に配慮したライフスタイルだといわれ始めた。しかし、2000年代以降、容器包装プラスチックが世界規模で爆発的に増えたため、世界的な動きはリフューズ(Refuse、使わない、使用を断る)が大切だと考えるようになってきた。
日本の自治体は、ごみ処理の優先順位を、1.リサイクル、2.焼却、3.埋め立て、としている。
日本は、国内に1100以上の焼却炉がある。1つの国が持つ焼却炉としては世界最多だといわれている。莫大な税金を使い建設した焼却炉を、自治体は使い続けなければならない実情がある。
日本において、プラスチックはどのようにリサイクルされているのか?
大雑把な計算だが、従来の日本では約900万トンのプラスチックごみが廃棄されている。
その内訳は、下記の通り。
250万トン 1.メカニカルリサイクリング
50万トン 2.フィードストックリサイクリング
550万トン 3.エネルギーリカバリー
150万トン 4.単純に焼却、または埋め立て
国際的に考えられているリサイクルの分類において、日本のリサイクル率は30%程度だと考えられる。約60%は、回収されたプラスチックごみを焼却処分している。
2017年までは、1.メカニカルリサイクリングの250万トンの60%に相当する150万トンを海外へ輸出していた。