【ビギナー向け解説シリーズ】輸入許可がおりなかった貨物とその行方
輸出通関を終えて、はるばる日本の港まで到着して、さあいよいよあと少しで納品…の前に、輸入通関で審査に引っかかってしまい、どうしても輸入することができない貨物があるということはご存知でしょうか。
この記事では、輸入通関の許可がおりなかった貨物とその行方について解説します。
INDEX
税関と輸入許可
外国から様々な物品を輸入する、ということには以下のようなリスクが伴います。
・国内産業の弱体化
・国内の治安維持を脅かす危険物品の不正流入
・動植物に有害な病害虫の侵入
・危険物質による健康被害
・知的財産の侵害
これらのリスクを回避するため、日本では税関が『関税法』やその他関連する『他法令』に基づいて輸入品を厳しくチェックしており、法に抵触すると判断された物品は国内に持ち込むことができないように制度化されています。
この税関による一連の審査が輸出入通関です。
輸出できたのに輸入できないなんてことあるの?
・輸送中に商品が腐敗・変質した
・仕入れ時に不備があった(誤った情報、あるいは認識不足で関税法に抵触する商品を購入してしまった)
・検査の結果、商品に輸入禁止物質が含まれていた(許容数値を上回っていた)
こんな場合には、残念ながら審査によって輸入不可とみなされ国内に商品を持ち込むことができません。
既に日本の港に到着しているのに”国内に持ち込めない”とは?
港湾設備の一部は『保税地域』という特別なエリアになっており、該当エリアに存在する貨物は『外国貨物』として扱われます。
輸入許可申請中の貨物は、許可がおりるまでこの保税地域から出すことはできません。
保税地域から出せない輸入貨物はどうなるの?
輸入許可がおりなかった場合としては、次のようなケースが考えられます。
・商品自体に問題はない場合
・商品そのものに問題がある場合
それぞれのパターンについて確認していきましょう。
商品自体に問題はない場合
書類不備を修正、追加書類を準備し、再申請します。
その後輸入許可がおりれば、無事納品先まで輸送することが可能です。
ちなみに、保税地域での貨物保管には一定期間を過ぎると保管料が発生する場合もあり、想定外の費用負担が生じる可能性もあります。
このようなトラブルを避けるためにも、初めて輸入する商品については事前の相談をオススメしております。
商品そのものに問題がある場合
この場合は残念ながらどう転んでも国内に持ち込むことはできません。
そのため、輸出者と協議の上返送する、あるいは保税地域内で廃棄処分をする、ということが必要になります。
明らかに輸出者(売主)側の不備ということで無償で返送に応じる場合もあれば、
輸入者(買主)側の不備だからと高額な返送費用を提示されたり、そもそも返送を拒否される場合も…
輸入許可がおりなかった原因を確認した上で対処する必要があります。
例えば、売主側の好意でインボイスやパッキングリストに記載のないオマケが入っていて、
それが原因で輸入許可がおりなかった…というなんともやるせないケースも輸入の現場では珍しくありません。
輸入不可の貨物の処分方法
最終的に輸入許可がおりなかった貨物については、税関の指示に従って『滅却(廃棄)』を行います。
滅却(廃棄)処分の手続きや様子については税関ウェブサイトのコチラのページをご参照ください!
知的財産侵害物品の取締まりhttps://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/pages/d_003.htm
税関では、関税法第69条の11第2項の規定に基づいて没収した知的財産侵害物品は、処分場において、裁断・焼却等を行います。
けして、勝手に処分するのではなく、所定の様式に従て書類提出後、税関の許可のもと処分を行います。このとき、場合によっては税関職員が立ち会うことも。
輸入許可がおりなかった場合にまずするべきことは?
まずは輸出者(仕入れ先)と連絡を取り、該当貨物が日本で輸入できないことを伝えましょう。
もし追加書類があれば輸入通関申請の許可がおりる可能性がある場合には、速やかに必要書類の請求を行います。
どうあっても輸入できない貨物については、返送するのか、それとも滅却処分するのか、それらの費用はどちらが負担するのかなどを決める必要がありますが、交渉に時間がかかるとその分保管料などが膨れ上がるリスクもあります。
万が一の場合に備えて事前に書面を交わすなど取り決めをしておくなど、金銭的ダメージを最小限にとどめることも有効な対策です!