- 日付: 11/15/2021
- 物流
- D2D, 歴史, 海上コンテナ
- 著者:山田俊哉
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世界初のコンテナ船の発明からコンテナライゼーションへ発展したサプライチェーン
◇「世界初」のコンテナ船
世界初のコンテナ船は、日本に縁がある。1964年、船名「ELEMIR=エレミアまたエレミール」は、日本にて解体された。
船名「ELEMIR=エレミアまたエレミール」は、元の船名を「SS IDEAL X=アイデアルX号」と呼ばれていた。この世界初の海上コンテナ輸送船「SS IDEAL X=アイデアルX号」は、1956年に米国ニュージャージー州のニューアーク港からテキサス州ヒューストンへ58個のコンテナを輸送した。
海上コンテナを世界に普及させるきっかけとなり、「世界初」と広く伝わっているこの「SS IDEAL X=アイデアルX号」は、商業的に初めて成功したコンテナ船ではあるが、実際に海上コンテナを世界で初めて輸送した貨物船ではなかった。
1955年、英国「YUCON OCEAN SERVICES=ユーコンオーシャンサービス」社の「CLIFFORD J. ROGERS=クリフォードJロジャース号」が、世界初のコンテナ船であった。世界初のコンテナ船「CLIFFORD J. ROGERS=クリフォードJロジャース号」は、「CANADIAN VICKERS LTD.=カナディアンヴィッカース社」が建造し、北米にて鉱石の輸送にコンテナを用いて運航した。
「SS IDEAL X=アイデアルX号」が有名なのは、世界に初めてコンテナを普及させたその功績であり、経営者のマルコム・マクリーンが、トラック運送会からコンテナ船社へ経営を拡大し、自社が保有するコンテナ船を増やし、海運会社としてコンテナの運用を世界に広く普及させたことである。
米国在住のエコノミストのマルク・レビンソンによると、コンテナは
「輸送の単位を共通化し鉄道、トラック、船によるシームレスな貨物輸送を実現することにある」
THE BOX by Marc Levinson / コンテナ物語 マルク・レビンソン著
◇商船
商船は、世界に約12万隻以上あり、このうち漁船や特殊な作業船や100トン未満の船を除くと、世界の全商船は約5万隻といわれている。日本の商船は5千隻ほどで、約10%のシェアを占める。ばら積みや在来船と呼ぶ一般貨物船は全体の30%以上を占め隻数は最も多い。次に、オイルタンカーとコンテナ船が各約20%を占め、世界の商船の95%は貨物輸送を目的としている。
コンテナ船のサイズは多様だ。アジア域内は、コンテナを1,000個~3,000個積載できる船舶が運航している。アジアから北米や欧州向けは、1万個以上積載できる大型船が主流であり、コンテナを2万個以上積載できる超大型コンテナ船も活躍し始めている。
◇グローバリゼーションの変化
1990年代初頭までは西欧を中心とした経済構造であった。
18世紀半ばから19世紀にかけて起きた石炭や石油をエネルギーとした産業革命以降、1990年代初頭までの100数年間は、ヨーロッパやアメリカを中心とした一部の先進国の経済成長によって世界全体の経済を押し上げていた。G7とよばれるアメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、日本の7ヶ国が、世界全体のGDPの約70%を占めていた。
1990年代後半以降は、BRICsと呼んだブラジル、ロシア、インド、中国の4ヶ国などの新興国が台頭してきた。
これらの経済構造の変革を、グレートダイバージェンス(Great Divergence=大いなる分岐や大いなる格差と表記する)やグレートコンバージェンス(Great Convergence=大いなる収斂)という言葉で表す。
サプライチェーンを世界規模で展開し、高度な技術力を必要とする部品や素材開発を西欧や中国で生産し、組み立てなどをアジア各国で行う分業体制を築いたことにより、BRICsと呼んだブラジル、ロシア、インド、中国の4ヶ国以外にも、新興国が成長してきた。その結果として、グレートコンバージェンス(Great Convergence=大いなる収斂)が起きてきている。日本は、1990年代初頭まではG7の中にあり経済大国や先進国を自負していた。しかし2000年代以降の成長鈍化は明らかであり、他の成長国と比較すると経済は減速したまま、下降気味である。
グレートダイバージェンスとは?
Great Divergence=大いなる分岐や大いなる格差と表記する
19世紀以降に生み出された世界の富は、西欧人がその2/3を持つ、つまり7割近くの富は西欧人が保有している事を表し、それをグレートダイバージェンスと言う。
グレートコンバージェンスとは?
Great Convergence=大いなる収斂
第2波と呼ばれるグローバリゼーションの流れの中で、先進国と新興国の経済格差が縮小している現象を、グレートコンバージェンスと言う。先進国の経済成長率に鈍化があり、新興国の経済成長率が急速に高まっていることが、格差縮小の理由だ。
◇コンテナリゼーションが与えたグローバルサプライチェーンへの影響
コンテナリゼーション(Containerization)とは?
モノを効率よく輸送するためには、様々な形状のモノを統一化させ、共通の設備や輸送機器を持ちることが早道である。コンテナやパレットなどは、その最も顕著な輸送のユニット(=単位)である。ユニットロード(Unit Load)やユニットロードシステム(Unit Load System)と呼ぶ。その最小のユニットが、コンテナ(Container)やパレット(Pallet)であり、これらを用いた輸送をコンテナリゼーション(Containerization)やパレチゼーション(paletization)と呼ぶ。
コンテナの発明とコンテナの活用が、サプライチェーンに急速な変革を与え、より低コストの製造拠点を求める産業界の需要に応えてきた。
西欧中心の製造業は、1990年代初頭まで徐々に低コストのアジアへ製造拠点をシフトしてきた。コンテナ輸送、鉄道輸送、トラック輸送、航空輸送などの交通網や輸送技術が革新していった。
1990年代以降は、情報通信分野におけるイノベーションが、アイディアやノウハウなどを西欧から新興国やアジアへ技術移転を促した。従来の高度な技術力や高価な労働力で製造されていたあらゆる分野の様々な製品が、高度な技術力×安価な労働力×世界の輸送網によって、世界の各地域にて現地生産を一層進化させた。多国籍化した企業は、斬新なアイディアやデザイン、技術革新力、新商品の開発能力、広範囲な販売網を持つことで、生産拠点を急速に拡げ市場の専有化を競った。
高度化されたグローバルサプライチェーンの中において、コンテナは欠かす事の出来ない絶対的な輸送手段の地位を確立した。コンテナライゼーションは、グローバルトレードを行う多国籍企業の発展と比例して、世界中へ規模を拡大した。1980年以降発明された中では、インターネットやPC(パーソナルコンピューター)に匹敵する発明であると謳う人もいる。