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【中国輸入ビジネス 入門】上海港の歴史2

こんにちわ、本篇は引き続き、上海港の歴史をご紹介いたします。

戦後の歩み

1931~1945年の期間は、日中戦争が起き、上海は戦場となりました。1945年、日本の敗戦により上海は中国に戻りました。当時は国民党の支配下にありましたが、1949年、中国共産党の勝利により、上海には上海人民政府が置かれ、1966年からの文革時代は、上海革命委員会が置かれました。現在、その場所は上海政府系の浦東発展銀行になっています。

上海は、1978年以降、驚異の発展と成長を遂げました。1980年代には、中国共産党による国内・対外政策の改革が進み、上海にも再開発の波が押し寄せました。

鄧小平の政策により、1990年4月には、「上海浦東新区」建設が決定されました。上海に香港と並ぶ巨大経済地区を築くという構想のもとに、外資企業の誘致を積極的に行い、成長路線を引きました。これにより、黄埔江を挟んで租界地の対岸に当たる浦東地区に「上海浦東新区」という一大産業地帯の建設が始まりました。

1992年10月には中国共産党第14回党大会において、「社会主義市場経済」が提起され、一層大胆な政策が打ち出されました。「上海浦東新区」は国際都市として金融、貿易、経済の世界の中心地となりました。2010年の上海万博の時には、大規模なインフラ整備・拡充が行われました。

現在、上海港からは、月間約300航路あり、約3300便のコンテナ船が、欧州やアメリカ、アフリカ、東南アジア、豪州との間を往来しています。

上海港は、中国最大の港湾運営会社である上海国際港務(集団)有限公司(Shanghai International Port (Group) Co., Ltd=SIPG)が中核となって、経済振興戦略を推進しています。上海港の公共バースの運営とオペレーションは、SIPGが行っています。

上海港のコンテナターミナルとしては、従来、黄浦江沿いの軍工路ターミナルや張華浜ターミナル、宝山ターミナルがありましたが、国際的なコンテナターミナルとして建設されたのが、外高橋地区のコンテナターミナルです。

世銀の借款で開発が進められ、1994年に第1期ターミナルが完成し、その後、2期、3期、4期と建設が進み、2005年に5期が完成し、2010年に6期が完成しました。それぞれの水深は、12~14メートルあります。それぞれのターミナルには、冷凍コンテナを補完できるように、電源の設備も整っています。

また、外高橋コンテナターミナルから、トランシップして長江流域の港にコンテナを積みかえて運ぶ小型のコンテナ船(100~200TEU)も定期コンテナ船の荷役の合間に接岸して、積み替え作業を行っています。

上海からトランシップして輸送する長江流域の港としては、南通(Nantong)、張家港(Zhangjiagang)、江陰(Jiangyin)、鎮江(Zhenjiang)、九江(Jiujiang)、南京(Nanjing)、蕪湖(Wuhu)、武漢(Wuhan)、南昌(Nanchang)、長沙(Changsha)、重慶(Chongqing)などがあります。

外高橋1期ターミナル

外高橋(Wai gao qiao)1期ターミナル(3バース)は、1994年に稼働を始めました。上海浦東国際港湾コンテナターミナル有限公司(SPICT: Shanghai Pudong International Container Terminal Ltd.)が運営しています。水深は、12メートルあります。50トンを吊り上げるガントリークレーンが8基と35トンのガントリークレーンが2基あります。年間の可能な取扱量としては、75万TEUです。

使用船社:COSCO、SINOTRANS、JINJANG、SITC、HASCO、TSL

外高橋2期、3期ターミナル

外高橋2期から3期ターミナルについては、宝山・軍工路・張華浜の3ターミナルを運営するSCTと上海港コンテナ有限公司(SPC)の外高橋ターミナル支社で運営されています。そのためSPCWTと呼ばれています。(Shanghai Port Container Co., Ltd とWaigaoqiao Terminal Branch)

1999年に2期が稼働し、2002年に3期が稼働しました。水深は、13.2メートルあり、50トンを吊り上げるガントリークレーンが17基あります。年間の可能な取扱量としては、140万TEUです。

使用船社:TSL、CCL

外高橋4期ターミナル

4期ターミナルは、2003年に稼働を始めました。AP MollerとSIPGとの合弁会社(SECT: Shanghai East Container Terminal JV Co.)が運営しています。

水深は、14.2メートルあり、61トンのガントリークレーンが12基あります。年間の可能な取扱量は、180万TEUです。

使用船社:COSCO、SINOTRANS、JINJIANG、SITC、TSL

外高橋5期ターミナル

5期ターミナルは、SMTC: Shanghai Mingdong Container Terminalが運営しています。 2005年に稼働を始めました。

水深は、14.2メートルあり、61トンのガントリークレーンが12基あります。年間の可能な取扱量は、70万TEUです。

使用船社:COSCO、SINOTRANS、JINJIANG、SITC、HASCO

外高橋6期ターミナル

6期ターミナルは、2010年に完成、自動車専用ROROの2バースとコンテナ専用の3バースがあります。年間取扱量は210万TEU、完成車73万台が処理可能と言われています。

使用船社:COCO、JINJIANG

羊山コンテナターミナル

羊山深水港(ようざんしんすいこう)は、上海市浦東新区の東南30キロメートル沖合の羊山に建設された新しいコンテナターミナルです。羊山コンテナターミナルは、上海国際港務(集団)股份有限公司(SIPG)が運営しています。

羊山深水港および羊山保税地区は、大羊山島と小羊山島に属する島々の間を埋め立てて作られました。上海市との間には、長さ32.5キロメートルの東海大橋が建設されました。

第1期5バースは、2005年に完成しました。水深は16.5メートルあります。

スーパークレーンが18基あり、最大60トンの重量を揚げることができます。クレーンのリーチは65メートルあります。年間の可能な取扱量は、220万TEUです。

第2期4バースは2006年完成、第3期(A)3バースは2007年完成、第3期(B)3バースは、2008年完成しました。年間の可能な取扱量は、2期が250万TEU、3期が400万TEUです。

2017年には、世界最大級のコンテナターミナルの羊山第4期コンテナターミナルが完成しました。船からコンテナを下し無人搬送車で目的の場所に置くまですべて自動で行われます。

総面積223万平方メートル、水深は16メートル、全長2350メートルあります。処理能力は400万TEUとされています。本格的に稼働すれば、630万TEUを取り扱う見込みで、最終的にはガントリークレーン26基、レール式トランスファークレーン120基、自動搬送台車130台まで増設する計画があります。

上海港のコンテナの取り扱い推移

上海市を中心とする長江デルタ地域は、中国経済の中心地です。上海市及び長江デルタを形成する江蘇省、浙江省の経済的な生産活動状況は、中国のGDPの2割を占めています。

2019年の世界の貿易港のランキングは次の通りです。(単位は万TEU)

1位
上海
4330
2位
シンガポール
3720
3位
寧波・舟山
3754
4位
深圳
2577
5位
広州
2324
6位
釜山
2199
7位
青島
 2101
8位
香港
1830
9位
天津
1730
10位
ロサンゼルス
1697
11位
ロッテルダム
1481
12位
ドバイ
1411
13位
ポートケラン
1358
14位
アントワープ
1186
15位
厦門
1112
16位
高雄
1043
17位
ハンブルグ
928
18位
タンジュンペレパス
908
19位
大連 
876
20位
京浜
816

このランキングが示すように、中国の港の取扱量が他の国々の量を圧倒しています。2010年以来、上海港は世界一のコンテナの取扱量を維持しています。近年の取扱量は、2017年に4018万TEU、2018年に4201万TEU、2019年に4330万TEUと増加しています。

中国は、世界の船会社が、運賃コストの低減化のために大型化に進んでいることを早くから察知し、羊山深水港の建設を決めたことは、時代にかなっていました。その見通しの正しさが、上記の結果を示しています。

もし羊山深水港がなかったら、上海港から、フィーダー船を使い大型船の入港する他の国のハブ港まで運び、そこでトランシップすることになったでしょう。

上海港は、羊山深水港を含めて、さらに発展計画を進めています。

上海港の管理主体については、従来の管理主体であった上海港務局(SPA: Shanghai Port Authority)は、2003年に、上海市港口管理局(Shanghai Municipal Port Administration Bureau)と上海国際港湾(集団)有限公司(SIPG: Shanghai International Port(Group)Co. Ltd)に別れました。

上海市港口管理局の業務は、港湾の管理や立法業務、安全確保業務などや情報の統一化をはかる業務を行っています。

上海国際港務(集団)有限公司(SIPG)は、上海港の公共バースの全てを運営する会社です。ステベ(港湾荷役)は、全てSIPGの手配で行っています。また運営の多角化を進め、外資導入の規制を緩和して外資企業との合弁会社を設立しています。

まとめ

「上海港の歴史」は如何でしたでしょうか?上海港は、歴史的に長い時間をかけて、現在の繁栄を築いてきました。そこには、大国中国の歴代の皇帝は、華南の豊富な物資を北の首都まで運ぶという物流の大きな課題に取り組み、大規模な水路も建設しました。そのスケールの大きさに驚かされます。

帝国の威信を示すために、明の時代には鄭和による周辺の諸国への軍事的な示威活動もありましたが、そのことも、現在の海運や道路輸送の交通網の発達の基礎となっています。

物資の輸送は、文化の交流にもつながり、人々の生活を豊かにしました。貿易は、お互いの国の幸福のためにあると言っても過言ではありません。それは歴史が証明しています。