こんにちわ。今回は世界一の港、上海港の品質の高さについてご紹介いたします。
上海と日本の主要港の航海日数(Transit Time)
上海港と日本をつなぐ定期航路の主な寄港地は、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、博多港などが主な寄港地となっています。船会社により、その他の港も定期航路の中に加えて特色を出しているところもあります。
上海からの所要時間は、上海からそれぞれの寄港地まで、直接航行する場合の日数は、どの船会社でも、おおよそ下記のようになっています。それぞれの船会社の船のスピードには違いがありますが、船会社は、日本の港は公共バース(埠頭)を利用していることから、定曜日に荷役を予定します。港湾局では各船会社の荷役が重複しないように調整します。
各船会社の船の速度は、経済的に抑えながら調整しています。定曜日サービスを提供しているので、悪天候などでスケジュールが遅れ気味の時は、速度を上げることもできます。
定期航路においては、同じ本船で全ての港を寄港すると
上海→大阪→神戸→東京→横浜→名古屋→上海というようなループになってしまいます。
これでは、大阪・神戸の荷主は満足しますが、東京・横浜・名古屋の荷主にとっては、不満足です。
そこで、多くの船会社は寄港地を関西、中京、関東、九州の4つのループに分けるようにしています。
全ての船会社のスケジュールがこのようになるわけではありませんが、なるべく航海日数が増えないように努力しています。
いくら早く港に到着しても、先船の荷役が終わらないと、港外で待つことになります。各港のステベドア(荷役のオペレーター)は、船が着岸したら、早く荷役を終了させるために、効率の良い荷役作業が求められています。
スケジュールの維持の目的のために、各港の埠頭会社と専用ふ頭の契約をしている船会社もあります。その場合は、その船会社だけしか、そのバースを使用することができませんので、遅れが出ることはありません。
一般の顧客からは、どの船会社の船も同じに見えるかもしれません。しかし、コンテナ定期航路では、定曜日サービスをセールスポイントにしているところも多いのですが、台風や荒天のために、遅れることがしばしばあります。
日本から上海に運ばれる貨物の多くは、工場に行く製品や部品が多いので、遅れが出ると、生産に影響が出てしまいます。スケジュールの正確性は、船会社の選定には、最も重要なポイントとなります。
上海と日本という近い距離でも、船の遅れが出る原因として、気候の問題や、港の能力の問題があります。
日本の港は、一般的に大きくありません。増加する貨物量に対し許容量が超えてしまう場合があります。そのため荷役作業の遅れにより、スケジュールに遅れが出る場合もあります。
船会社は、遅れを取り戻すために、スケジュールを調整します。例えば、上海を出て、上海→大阪→神戸→東京→横浜→名古屋→上海という本船のスケジュールの中で、2日の遅れが出ているような場合、どのようにスケジュールを取り戻すかというと、神戸と横浜をスケジュールから抜いてしまいます。それを「抜港やSKIP(スキップ)」と言います。そうすれば、船はもとのスケジュールの日程を取り戻すことができます。
この場合、神戸の輸出コンテナは、船社の手によって、大阪まで運び大阪で積むことになります。同様に、横浜の輸出コンテナは、東京まで運ばれ東京で積むようになります。
3日以上遅れる場合は、スケジュールの取り戻しは不可能なので、日本での荷役は輸入のコンテナ貨物だけ揚げて出港することもあります。その場合、船会社は輸出貨物のために、その替わりの本船を用意しなければなりません。その場合、別の船名になりますので、輸出許可証の訂正が必要となります。
年末年始の休みやゴールデンウィークなど長期の休みが続く場合、定曜日サービスで、船は到着し大量のコンテナを揚げていきます。そのため、コンテナヤード(CY)には、大量のコンテナが滞留してしまいます。休み明けに、荷主側のコンテナの引き取りが始まりますが、すぐに大量のコンテナが引き取られるわけではありません。
また、ゲート前の混雑の問題も解消されていません。早朝にゲート前に並んだコンテナトレーラーが、コンテナを引き取るのに、半日も待たされることもあります。各港のオペレーターは、いろいろな改善策を出して、混雑解消問題に取り組んでいますが、日本の港湾の問題は限界に近付いているのかもしれません。
上海航路で特有の問題と言えば、濃霧の発生です。毎年3月から4月ごろにかけて、上海港から長江の入り口にかけて、濃霧が発生します。長いときは、100時間以上、上海港がストップしてしまうこともあります。
濃霧が発生すると、パイロットが本船に乗船して、岸壁に着岸することができなくなります。その場合、上海港の外側で待機しなければなりません。多い時には300隻以上の船が待たされたこともあります。
各船会社は、このような遅れが出た場合、スケジュール調整が大変です。週に1便しかない船会社は、次の週に船が来ないようなことも起きてしまいます。週に3船ぐらいの便数を持っていると、次の船にコンテナをシフトしてもらい、スケジュール調整ができます。船腹に余裕のある船会社の方がスケジュールの維持に有利です。
上海から輸入される貨物の量は、日本からの輸出する貨物の量の2倍の量があります。そのため、日本に空コンテナが滞留し、中国側に空コンテナが不足するという状態が続きます。
船会社は、これを解決するために、日本からの輸出船にできるだけ、空のコンテナを積んで帰ります。輸出の実入りコンテナの数が、輸入に対して、約半分ですので、空コンテナを積む量が多いと採算が悪くなります。
中国から輸入された実入りコンテナは、1週間から10日以内にコンテナヤードから搬出され、デバン後、空コンテナが帰ってきます。コンテナのコンディションは、E.I.R(Equipment Interchange Receipt)と言われる機器受け渡し証で、チェックします。
貨物の水濡れなどのダメージが発生した場合、E.I.R.のコンディションが重要となります。問題となるのは、スティールコンテナの劣化から起きる錆がもとで、コンテナの天井にヒビや穴が発生します。
日中航路で頻繁に起きる問題は、悪いコンディションの空コンテナでも、積地の荷主が、良いコンテナと交換をせずに、貨物をそのままバン詰めしてしまうことです。
船荷証券(B/L)の裏面約款には、悪いコンテナでも、そのまま受けてしまう場合は、荷主が承知の上で使うことを承諾していることになります。そういう場合、船会社はダメージに対する求償を断ることができる可能性が出てきます。
積地の荷主は、予定した時間内に作業を終わらせたいという事情があります。悪いコンテナであっても、時間に余裕がなく、トラック料金も余分にかかります。
時間とドレージ費用を余分に負担してまで空コンテナを交換する余裕がありません。すぐにバンニングしたいので、空のコンテナをそのまま使用することが多いという事情があります。
良いコンディションのコンテナを受け取るためには、空のコンテナを引き取る前に、コンテナの外観及び内部をチェックする事が大切です。
船会社はも、空コンテナの需要が多いことから、中国サイドでコンテナの修理が間に合いません。多少のダメージがあっても、そのまま出してしまうことがよくあります。
それなら、日本で空コンテナの修理をすれば良いのではと考えますが、日本でのコンテナの修理代は、高すぎるという問題があります。
空コンテナのメンテナンスに時間を割くことができないというのが、各船会社の悩みの種です。コンテナを多く保有する大きな船会社にしても、大きなボリュームを扱わなければならないので、必ずしもメンテナンスが万全とは言えません。船積みを開始する前に、輸入側の荷主は、積地の荷主との協議を十分に重ねて、安全な船積みを進める必要があります。
日中航路の定期コンテナ航路においては、顧客のニーズとして、本船のスケジュールの正確性や良いコンディションの空コンテナの供給以外にも、様々なニーズがあります。例えば、月末デートが必要なB/Lの対応や、B/Lの早期発行、サレンダードB/L(元地回収)の必要性、クレーム処理の対応、フリータイムの延長、空コンテナの早期搬出及び前搬入など、多くの要請があります。このような中国航路特有の商慣習もありますが、船会社によっては、法的な見地から厳格に対応するところもあります。船会社の選定に際しては、どこまで対応可能か前もって確認する必要があります。