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RCEP発効は日中貿易にプラス?輸入促進の効果を検証してみよう

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RCEP

ここ数十年、世界は積極的に自由貿易を推進してきました。2016年の米トランプ政権発足以来、その動きは見直しモードに入りましたが、それでも新しいFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)が締結されています。今年の11日に発効したRCEPもその1つです。RCEPは日本にとって初の中韓と結ぶEPAとして、注目されています。それはどのような枠組みで、日本の貿易、なかでも日中貿易にどのような影響を与えるのでしょうか。 

RCEP…TPPとの違いは中国の存在   

かつてない広範囲にわたる経済連携

RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)日本語に訳すると地域的包括的経済連携・・・わかるようでわかりにくいですが、もっとも大事なところは「Comprehensive」つまり「包括的」という単語が表しています「包括的」とは、すべてをひっくるめている様を表す言葉ですが、その言葉の意味通り、かつてない広範囲の地域(国)を対象とした経済連携の協定がRCEPです。 

TPPと何が違うのか

ここ数年の経済ニュースでは、TPP(Trans-Pacific Partnership)環太平洋パートナーシップ協定、の方が話題に上りました。RCEPTPPの最大の違いは加盟国に、中国が含まれるかどうかです。TPPはもともと、日米を中心とした中国に対抗するアライアンスの枠組みでした。対して、RCEPは日中韓、アセアン、インド、オセアニアの地域的連携です。 

ところがTPPは、トランプ政権の米国が抜けたかと思えば、中国、台湾が加盟申請をするなど、当初の計画から性格が変化してしまいました。2018年に一旦、米国抜きでTPP11協定が発効しています 
ちなみにRCEPの方は、計画通りに締結されたのかというと、こちらも当初のメンバーからインドが抜けるなど、状況は複雑化しています。しかしながらRCEPの方がより想定に近いかたちでスタートした、とは言えそうです。 

RCEP…世界30%の巨大スケール  

日本は、経済上の国益確保・増進を図るため、二国間、多国間を問わず、FTA/EPAを推進していく方針を守っています。そのなかでRCEPは、これまでの最大の枠組みとなりました。日本政府はRCEP締結の意義の一番に、そのスケールの大きさを挙げています。またRSEPの対象分野は、物品、サービス、投資と多岐におよびますが、本稿では物品について考察していきます 

RCEPの規模感は? 

RCEPの参加国は、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、中国、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの15カ国。合計GDP(2019年)は、25.8兆ドル、世界全体の29%に当たります。また貿易額(輸出ベース)合計は5.5兆ドルで、やはり世界の29%、人口合計は227000万人で、30%です。どの指標を取っても世界の30%を占めています。 

経済効果UPへの期待 

RCEP201211月から協議をスタートしました。インドの撤退など紆余曲折はありましたが、交渉を重ね、202011月、協定を締結しました。参加国全体の関税撤廃率は、品目ベースで91%に上ります。 

日本の関税撤廃率は、アセアン、オセアニアが86100%、中国が86%、韓国が83%です。中韓とは初めて結ぶ協定のため、大きな経済効果が期待されています。というのも、日本市場へのアクセスが改善され、締結国は日本への輸出がやりやすくなることが見込まれているからです 

数字でみるRCEPの影響効果

それでは日本の輸入額786000億円に占めるRCEP参加国の割合をみてみましょう。 

中国23.5%、ASEAN15.0%、オーストラリア6.3%、韓国4.1%、ニュージーランド0.4%、合計49%です。 

つまり、30%の地域から全体の輸入額のほぼ50%にあたるほどのボリュームで輸入をしているのです。ちなみに輸出額789000億円に対するRSEP依存度は43%です。 
ちなみに輸入における中国依存度23,5%という数字は、EU+英国の12,4%、米国の11.0%を足したのに等しいスケールです。 

これらの数字からも、RCEPの発効がいかに大きな影響をもつかがわかりますね。 

日本市場へのアクセス増大・・・既存産業へのデメリットはないのか? 

関税撤廃率の引き上げは、品目によっては必ずしもメリットばかりではないケースもあります。 

日本政府は、RSEP締結国からの物品輸入について次のように説明しています。 

農林水産品の場合 

米、麦、牛肉、豚肉、乳製品、甘味資源作物の重要5品目は、関税削減、撤廃から除外されました。その他の関税撤廃率は、日本がこれまで締結したEPAの範囲内に抑えました。(参考:アセアン諸国61%、中国56%、韓国49%) 

すでに中国からの輸入が多い、たまねぎ、にんじん、しいたけ、冷凍さといも、冷凍ブロッコリー、うなぎ製品も、関税削減・撤廃の対象にしませんでした。 

また、国産品だけで需要をまかなえる、または国産品と棲み分けができているものでも、長期の期間(16年目に撤廃など)を確保しました。 

工業製品の場合 

農林水産品と比較して日本からの輸出の割合が高めの工業製品は、関税が撤廃されることで恩恵を受けることが可能です。そのため、即時または比較的早い段階で撤廃されるように設定されています 
関税撤廃率は、アセアン諸国とは98.5%から99.1%へ、中国に対しては47%から98%へ、韓国に対しては47%から93%まで最終的に上昇する予定です。 

原材料を輸出、または輸入して加工する製品の場合 

RSEP締結国の①完全生産品、②原産材料のみからから生産される産品、③産品に応じて関税分類変更基準や付加価値基準等のいずれかを満たす産品(PSR)の3つはRSEPにおいて、原産品と見なされます。特恵関税(開発途上国への優遇関税)の適用範囲が拡がるため、日本の経済にとっては大きなプラス要因になり得ます 

日本から輸入する部品は高付加価値であるものが多いですが、それがASEAN諸国での原産材料と認められ特恵関税の対象となれば、製品価格における原材料費の削減につながり利益率が増大する仕組み・・・というわけです。 

中国輸入ビジネスにおけるRCEPの効果 

RCEPの概要を説明したところで、いよいよ本題の中国輸入ビジネスにおける効果のほどを検証してまいりましょう。 

即効性はあるのか? 

まず中国からの主要輸入品目とその割合を見てみましょう。(※2019年のデータです) 

機械類49.3%、繊維・衣類等12.3%、家具・玩具等6.3%、金属・金属製品6.1%、化学製品5.6%、食料品14.9%、その他14,9%となっています。 

RSEP締結以前から、機械類を始め、全体の約70%の品目は無関税でした。課税品目の中心は、繊維・衣類等、食料品、化学製品、プラスチック製品です。このうち発効時から撤廃が進むのは化学製品のみです。活性炭、有機合成着色料、染料などが無税となりました。しかし、それ以外の品目では、段階を踏むため、即効性には少々疑問があります。 

中国からの輸入品関税率…ゼロになるのはいつ? 

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの、関税削減品目の平均関税率の(予想)推移、という資料があります。その対中国分を見ると、RSEP発効前は、6.6%だった関税が20221月、5.9%、234月、5.0%、254月、4,2%、284月、3.0%、30年、2.1%、33年、1.0%、36年、0.2%、と下降していき、2040年には、ほぼゼロとなる見込みです。RCEP発効前に有税だった30%のうち12%を占めている繊維・衣類製品などは特に、徐々にとはいえ関税率が下がるのは中期的に見て輸入促進に効果的といえるでしょう 

2022年4月現在の効果は? 

4月中旬、中国海関総署(税関)は2022年第1四半期の貿易統計を発表しました。ここから何らかのRSEP効果は見られるでしょうか。  

まず輸出総額つまり相手国にとっての輸入額ですが、8209億ドル、前年同期比15.8%増でした。ところが、米国1389億ドル、16.7%増、EU1358億ドル.23.3%増に対し、RSEPの主力、アセアンは1181億ドル、13.3%増、日本は419億ドル、8.3%増と平均伸長率を下回っています。活性化効果はなかったのでしょうか。 

この貿易統計のコメントによれば、「中国の輸出企業は、RSEP協定に基付く原産地証明の申請・発行・受領により、輸入国の関税は、25000万元の減免を受けた。主要品目は、有機化学品、プラスチック・同製品、ニットなどのアパレル。」とあります。このうち日本の減免分がどのくらいあるのかまでは分析できませんが、多少なりともRCEPの効果が発揮されたのは間違いなさそうです。 

もちろん輸入業者にとって目下最大の頭痛の種、円安をカバーできるレベルではありませんが、メリットは少なからずあり、長いスパンでみれば中国輸入ビジネスが活性化し、企業採算に貢献することが期待できそうです 

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