輸入貿易を行う上で絶対に避けて通れない法律といえばまず、関税関係の法律が挙げられます。
輸入手続きの際に主に関わることになる「関税法」・「関税定率法」・「関税暫定措置法」は関税三法と総称されたりもします。
国内産業を保護するためにも重要な関税とその法律ですが、
ある特定の製品については税関の輸出入の許可のほかに担当省庁の許可承認が必要なものも存在します。
それらの製品の輸入が許可されるために必要な法律は、税関が定めるところの“関税関係以外の法令”、つまり、その他の法令ということで「他法令」と総称されています。
2021年9月現在、輸入貿易に係る他法令として定められている法律は29個ありますが、今回はその中でも特に関わる確率の高い他法令4つをピックアップしてみようと思います。
読んで字のごとく、食品全般に関わる法令です。
食品汚染や食中毒などを防止し食品の安全性を確保するために、1947年に定められました。
この場合の『食品』とは、『口に入るもの、口に入るものに直に触れるもの』として定義されています。
すべての飲食物・添加物は当然のことながら、飲食物が触れる食器や容器包装も主な品目として含まれています。
そして、対象年齢6歳未満のおもちゃも対象品目となっています。
食べ物ではないので意外に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、小さなお子さんがおもちゃをなめたりかじったりする可能性が高いことを考えれば納得の規定ですね。
関係する可能性のある商品
・食品、飲料品全般
・食器:お皿・お茶碗・コップ箸・フォーク・スプーン・ストロー・お弁当箱など
・調理器具:包丁・まな板・鍋・スライサー・お玉・トング・泡立て器・ボウルなど
・キッチン家電:コーヒーメーカーのタンクやミル部分・電気ケトル・炊飯器や電子ジャーの窯部分・ミキサーなど
・容器、包装用品:使い捨てのお弁当、お惣菜パック・バラン・ピック・ラップフィルム・アルミホイル・カップなど
・おもちゃ:食品が触れる調理玩具・対象年齢6歳以下の玩具
参考サイト:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144562.html
海外からの病害虫の侵入を防ぐため、輸入される植物に対して検疫の実施を定めた法令です。
野菜や果物などの青果はもちろん、穀類、豆類等の消費用植物の他、栽培用植物の苗や球根、種子などをはじめ、切り花、木材、また植物に有害な生きた昆虫・微生物など、輸入植物検疫の対象は広範囲にわたっています。これらのうち、食品として輸入されるものは食品衛生法もクリアする必要があります。
ちなみに、高度に加工された植物、植物の病害虫でない昆虫・微生物、死滅した昆虫標本等は輸入植物検疫の対象となっていません。
例えば、茶葉などは食品衛生法には該当しますが、植物防疫法には該当しない品目です。
関係する可能性のある商品
・未加工の木材
・木製梱包材
・消費用植物:野菜・くだもの・穀類・豆類・イモ類
・栽培用植物:切り花・苗・球根・種子
・生物:生きた昆虫・生きた微生物
参考サイト:農林水産省 植物防疫所https://www.maff.go.jp/pps/j/introduction/import/index.html
家畜の伝染性疾病(寄生虫病をふくむ)の発生を予防し、まん延を防止することにより畜産の振興を図ることを目的として定められた法令です。
指定された動物については生きているか、なんらかの加工済みかを問わず検査の対象とされています。
肉はもちろん、皮や被毛、卵や羽、受精卵や糞など厳密に定められており、こちらも食品として口に入るものは食品衛生法の許可が別途必要です。
ちなみに、穀物のわら・飼料用の乾草は植物ですが家畜伝染病予防法の対象品目となっています。業界の方以外には関係のないものに感じますが、これらの複雑さ、細かさによって日々の暮らしが守られることに繋がっていると思うと、改めて法令の重要性を感じます。
関係する可能性のある商品
・偶蹄類の動物・馬・鶏・うずら・だちょう・七面鳥・かも目の鳥類・犬・兎・みつばち
・上記の生物の肉・骨・卵・内蔵など
・上記を用いたソーセージ・ハム・ベーコンなど
・一部のペット用動物
参考サイト:農林水産省 動物検疫所https://www.maff.go.jp/aqs/hou/36.html ・ https://www.maff.go.jp/aqs/animal/index.html
とっても長い名称の法律ですが、これはいわゆる“旧薬事法”のことです。
“薬機法”と略される場合もあります。
その名の通り、医薬品、医療機器等の品質と有効性および安全性を確保する他、指定薬物の規制、研究開発の促進などを目的に、製造・表示・販売・流通・広告などについて細かく定めた法律です。
医薬部外品、化粧品などの定義を定めたり、健康食品の規制をするのにも活用されています。
この法律の対象となるのは人間用のものだけでなく、動物用のものも含まれています。
化粧品やせっけん、シャンプーや入浴剤、染毛料、歯磨き粉などは、成分や効能によって薬機法の対象外である化粧品・雑貨となる場合と、薬機法の対象となる医薬部外品となる場合がありますので、とくに注意が必要です。
関係する可能性のある商品
・医薬品
・医薬部外品:一部せっけん・シャンプー・クリーム・ローション・入浴剤・歯磨き粉など
・医療機器:一部効能の表示されたマッサージ器具など
参考サイト:関東甲信越厚生局https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/iji/yakkanhp-kaishu-2016-3.html
以上、輸入貿易でよく関わる他法令4つのご紹介でした。
ちなみに、雑貨や服飾などの輸入で気になる著作権法や商標法など知的財産にかかわるものについては、他法令としてではなく、関税法第69条によって輸出及び輸入してはならない貨物と定められた『知的財産侵害物品』として取り締まりの対象となっています。
他法令にかかわる品目ものを輸入する場合、これらの厳格な法令をクリアした証明書が発行されてはじめて輸入通関を行うことができます。
例外などもありますが、基本的にこれら他法令に関わる品物については日本に到着後の手続きに思わぬ時間がかかったり、中には残念ながら輸入許可を得ることができないケースも想定されます。
海上速達便では、『特に注意して頂きたいお荷物』として以下の品物を挙げております。
・食品
・食器
・調理器具
・6歳以下対象玩具
・動植物
・コスメ
・医薬品
・バッテリー
・危険品
これらの中には上記の他法令が関わるものが含まれており、輸入の手続きなど細かな確認が欠かせないものもあるため、事前のご相談を必須とさせていただいております。
ちなみに、税関公式サイトのつぎのページには《輸入関係他法令一覧表》が掲載されています。
税関の記事は信頼性が高いですので、参考にしてみてくださいね。