食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋…。皆様はどんな秋をお過ごしですか?
10月第二回目の海上速達便のメルマガは、知識の秋ということで前回に引き続き輸入通関への理解を深めてまいりましょう!今回は『税関検査』のアレコレについてのコラムをお届けいたします。
今後の輸入にぜひお役立てください。
コラムの前にコチラのニュースもご覧ください。
中国系船会社でEMC導入の動き
SITCやSJJなどの中国系船社で、下記のように中国発日本向け輸入貨物に対するEMC (Equipment Management Charge) の導入がアナウンスされています。
※EMCとは一般的にコンテナの管理・点検費用に係るサーチャージです。
名称:EMC(Equipment Management Charge)
対象貨物:日本向け輸入貨物全般新
料率:JPY3,000/20′ JPY6,000/40′
実施時期:2021年10月20日以降(積港 ETD を 基準)
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どんなことをするの?所要時間は?費用は発生するの?
税関検査のギモン徹底解説!
海上速達便のメルマガで輸入通関書類の基本については先週ご紹介いたしましたね。
そのなかで輸入通関とは“外国貨物を適切に日本国内に輸入するための手続き”であり、税関による検査・審査と関税・消費税の納付が正しく手配されることで初めて輸入許可が降りる、と解説いたしました。
ところで、その“税関による検査・審査”とは具体的にどのようなことが行われるのでしょう?
今回は、気になる税関検査について流れや費用などを解説いたします。
輸入通関の第一段階としてまずは、インボイスやパッキングリスト等の書類から輸入貨物の名称や単価・個数・重量や成分など、その貨物が輸入しても問題ないモノなのかという基本的なチェックが行われます。
現在では輸出入に関わる手続きのほとんどはNACCS(輸出入・港湾情報処理システム)という共通システムにより処理されています。
NACCSで輸入申告すると、貨物は以下の3つの区分で判定がなされます。
区分1=簡易審査扱い: 輸入(納税)申告後直ちに輸入許可されます。
区分2=書類審査扱い: 税関に通関書類を提出して審査を受けます。
区分3=検査扱い: 税関員が現物検査を行います。
弊社実績によると何度も輸入した実績のある取引先、貨物内容である場合などには区分1になることが多く、その場合すぐに輸入許可が下りるのでその後の納品までは非常にスムーズです。
ただし、初めての輸入の場合にはたとえ他法令や減税制度などの複雑な手続きが必要ない貨物であっても審査・検査のステップが発生する確率が非常に高いです。
【審査・検査はどんなことをするの?】
区分2の判定が出た場合は税関による書類審査が行われます。
該当貨物の輸入(納税)申告について、品目分類、関税率、関税額が正しく申告されているか、書類内容に間違いや矛盾点がないか、また輸入禁制品に該当しないか、他法令による規制をクリアしているかなどをチェックされます。
審査に要する日数は案件により異なりますが、何も問題が無ければ申告当日に輸入許可が下ります。(※午前中に申告した場合に限り)
ただし書類内容(品目分類や申告価格など)に問題があった場合は、追加書類の提出や下記で解説するのと同様の検査が必要になり、輸入許可が下りるまで時間がかかるケースもあります。
区分3の判定がでた場合、ここで生じるのがいわゆる『税関検査』です。
現物検査、文字通り書類だけで輸入許可を出してよいか判別がつかない場合に税関職員が貨物の現物をチェックする手続きです。
現物検査のチェックポイントも基本的には書類審査と同様ですが、輸入申告の内容と実際の貨物が合致しているのかが目視などの方法で確認されます。
検査手段は、大きく分けて以下の2パターンです。
1:改品(かいひん)検査
開披(かいひ)検査とも呼ばれますが、これは貨物の梱包を一旦解くなどして内容物を直に目視確認する検査です。
カートンボックス(段ボール箱)であれば開封後の現状復帰が容易なため、基本的には箱を開けてチェックが行われます。
瓶詰の液体などは、空港の保安検査などでも使われる近赤外線センサーを用いて中身を出さずに検査することもできます。
では、開封が困難なドラム缶や大型の貨物などの検査はどうするのでしょう?その場合に適用されるのが次で解説する検査手法です。
2:大型X線検査
レントゲン検査とも言います。
主要税関の近くには「大型X線検査場」があり、コンテナを丸ごとX線にかけることができる装置が備えられています。
コンテナを引いている車両ごと装置を通過することでX線検査を行います。
通常はこれで検査完了となることが多いですが、万が一不審な影などが映った場合はその場で改品検査を追加で行うこともあります。
【検査はどこでするの?】
よほど特殊な条件(※注1)の貨物でない限り、改品検査も大型X線検査も税関の管轄である検査場で実施されます。
検査は基本的に税関長が指定した場所で行われます。
(税関長の許可があれば指定された場所以外で検査を受けることもできなくはないですが、諸々の手続きに手間も時間も費用も余分にかかるため、どうしようもない事情がない限りは選択肢に入りません)
※注1 特殊な条件の貨物に対する検査は以下のようなものがあります。
現場検査:税関検査場への持ち込みが困難な貨物の場合(大型機械など)
艀中検査:艀に積んだままの状態の場合(木材、化学薬品など)
本船検査:外国貿易船舶に積載したままの場合(小麦、木材など)
【検査の費用はどれくらいかかるの?】
ここが一番関心の高いポイントかもしれませんね。
結論から申し上げますと、残念ながら事前に費用の目安をご案内することは非常に困難です。
税関の指示によって行われる諸々の検査ですが、税関から費用が請求されるわけではありません。
では検査は無料なのかというと、そういうわけにはいかないのが現実です。検査が発生した場合、請求書には検査費用が計上されることになるのですが、その理由をこれからご説明いたします。
ここまで解説した検査では、基本そのすべてに立ち会いが必要となります。
多くの場合輸入者のみなさまに代わって検査に立ち会うのは、通関手続きを請け負っている通関業者のスタッフです。
また、貨物が一時保管されている保税倉庫から税関指定の検査場に貨物を移送するために車両を手配する必要もあります。
さらに、先ほどの項目にあった税関指定の各検査場で検査の準備(梱包を解いたり、カートンを開封したり)やその後始末ができるのは税関付きの業者のみであり、自分たちで作業を賄うことができません。
つまり、検査に要した手間に応じた人件費や輸送費、手数料などが『検査費用』としてお客様に請求されるのです。
検査費用は案件ごと、ケースバイケースで算出されます。
あらかじめはっきりとした目安をご案内することが難しいのはこのためです。