中国でも北京を筆頭に、上海と同じくらいの知名度がある「深セン」。
深センとはどのような都市なのでしょうか。
香港の近くにあるとは知っていても、具体的にどんな都市なのか知らない人という方は意外と多いのでは?
この記事では中国のシリコンバレーと呼ばれるIT先進都市「深セン」を紹介していきます。ぜひ参考にしてくださいね!
中国のシリコンバレーと呼ばれるまでになった深セン。その背景と、中国全土から起業家やイノベーターが集まる魅力はどこにあるのか、深センの基本と一緒に紹介していきます。
深センは中国南部(華南地区)の広東省に位置する都市で、中国の4大都市「北上広深(北京・上海・広州・深セン)」の一つに数えられており、中国を代表する国際都市と言われています。1980年には中国ではじめて「経済特区」に指定された地域であり、香港に隣接する地理を活かし、外資企業の融資などを頼りに発展してきました。
その後、2015年に中国のスローガンとして掲げられた「大衆創業・万衆創新(大衆の起業・万民のイノベーション)」により、起業する人が集まり、「中国のシリコンバレー」と呼ばれるに至ったのです。
深センはIT関連企業のスタートアップがつぎつぎに誕生する背景から、「中国のシリコンバレー」と呼ばれ、中国を代表するIT企業のファーウェイ(通信機器)、テンセント(WechatやQQ)、BYD(自動車)、ZTE(通信設備)、DJI(ドローン製造)の本社を構えています。 ではなぜ中国のシリコンバレーと呼ばれるようになったのでしょうか。
深センがつぎつぎにイノベーション企業を生み出せる背景には、どんな理由が隠されているのでしょうか。
中国はいままで「世界の工場」と呼ばれることが多く、製造の下請けを中心に発展してきました。そんな現状を打破するために、中国政府は2015年に「大衆創業・万衆創新(大衆の起業・万民のイノベーション)」をスローガンに掲げ、同年から起業・イノベーションを促す政策や方針をつぎつぎに打ち出しました。2015年前後に全中国からスタートアップ企業が生まれた背景はこのような中国政府からの後押しが背景だと言えそうです。
なぜ名だたる企業の本社が深センに集まっているのでしょうか。
深センを中国のシリコンバレーと世界に認めさせた原点ともいえる企業が、「Seeed」と言われています。Seeedは2008年に深センで創業し、現在の社員も200名規模とそれほど大きくありません。Seeedの事業は多岐にわたり一言で表せませんが、創業時は欧米人からプリント基板(PCB)のデータを受け取り、深センにあるほかのPCB工場で生産し、発注者に送り返すサービスを事業としていました。また、Seeedは3DプリンタやAIスピーカーを作れるキットを販売しており、さまざまな製品を売るマーケットプレイスの運営も事業の一つです。Seeedの販売サイトには、ほかの起業家やイノベーターが考えたアイディアや製品がSeeed製品と一緒に売られているのです。さらに、Seeedは同じような起業家やイノベーターを支援するために「柴火創客空間(メイカースペース)」を立ち上げました。この「柴火創客空間(メイカースペース)」をモデルにして、深セン政府はメイカースペースの運営に助成金を出すことで、深セン市だけでも200を超えるメイカースペースが誕生し、急拡大していったのです。
深センが中国のシリコンバレーと呼ばれるようになった詳しい背景などは、以下の記事にまとめられているので興味のある人は参考にしてください。
《IDE JETROより『中国:深圳のスタートアップとそのエコシステム(Ver.3)』》
https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Eyes/2016/RCT201614_001.html
中国の発展スピードは日本の比ではなく、半年も離れれば全く違う景色を見せてくれるほど、時間の流れがほかと違います。
ここでは中国深センの興味深いところをいくつかの企業の紹介とともに紹介していきます。
深センの福田区に位置する「華強北」は日本の秋葉原をまねて作られたと言われていますが、今では秋葉原の30倍を誇る規模にまで成長しています。
深センの電脳街は二つの巨大ビルからなり、その一つが「華強電子世界」です。ビルの中に入るとパソコン関連ショップや、電子部品のパーツに至るまでさまざまなショップが軒を連ねています。
パソコンや電子部品が好きでたまらないファンにとっては、深センの電脳街「華強電子世界」も魅力的な場所に見えるでしょう。
AutoX(深セン裏動智駕技術有限公司)は、2016年に設立された企業で、自動運転技術の開発を主な事業としています。2020年1月には中国初となる完全無人運転となるロボタクシーを発売し、深センで運用されています。さらに2021年には本田技研工業の中国法人と提携を発表し、ホンダの「アコード」と「インスパイア」の自動運転テストを深センで進めています。
Royole (深セン市柔宇科技有限公司)は、2012年に深センで設立されたフレキシブルディスプレイを開発するユニコーン企業です。2014年には世界初のフレキシブルディスプレイを発表し、2018年に世界初のフレキシブル携帯を発売しています。
フレキシブルディスプレイが普及してくれば、スマホだけに限らず広告や教育現場、着られるディスプレイとしてのウェアラブル用品など、広い用途で使われそうです。
MedicaTech(深セン市邁迪加科技発展有限公司)は、2011年に深センで設立された装着不要の睡眠センサーデバイスとアルゴリズムを開発する企業です。装着不要のセンサー技術により、心拍数、呼吸、歩行状況、寝返り、睡眠周期、生体リズムなどの指標を監視できる仕組みになっています。
日本はほかの先進国と比較しても睡眠時間が短いことで知られています。また、日々のストレスによって睡眠障害を抱える人も多いでしょう。この非接触型センサーをスマホのアプリと連携させることで、睡眠の質を改善してくれる手助けをしてもらえます。
これらの技術は、超高齢化社会に悩まされる日本社会の課題解決の一助になることも期待できそうです。
中国はキャッシュレス社会の最先端を走っていると言われています。そんな中、キャッシュレス社会の先を行くようなサービスが出てきているのも事実です。
例えば、「顔認証決済システム」はスマホすら必要ありません。深センにある自動販売機ではこの「顔認証決済システム」が導入されており、顔をかざすだけで支払いができるようです。
さらに先ほども紹介した通り、深センでは完全無人バス「アルファバス」も運行されており、スマホによるキャッシュレス乗車は当たり前、今後は顔認証による乗車システムも導入されるそうです。
今回は中国のシリコンバレーと呼ばれる深センについてポイントを絞って紹介してきました。
顔認証システムやバスの無人運転など、中国の中でも最先端IT技術を取り入れた一端を垣間見られたかと思います。
今はコロナで思うように中国と行き来できませんが、機会があればぜひ自分の目で見てみるのもよいかもしれませんね!