- 日付: 11/20/2022
- 貿易
- D2D, シェアリングエコノミー, 用語
- 著者:山田俊哉
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貿易においては、電力も国境を越えて国際間で売買されている
INDEX
エネルギーは天然資源とも呼ぶ
エネルギー源としている代表的な天然資源である石油、石炭、天然ガスは、特殊な構造をした専用運搬船によって海上輸送されている。特に、周囲を海洋に囲まれた島国の日本は、天然資源の輸入において、専用の貨物船を積極的に開発し造船してきた。運搬する専用船は、発電所に近い最寄りの港へ寄港するため、特に関心を持たなければ、天然資源を運ぶ専用船に気づく事はないだろう。日本の経済活動において不可欠なエネルギー源の輸入や輸送は、人々の日常生活の中において注意が払われる事がない、しかし確実に日常生活に欠かす事のできない電力や自動車の燃料として消費されている。日本へ輸入された天然資源は、国内の各地発電所で電力を生み出している。
隣国と地続きの国境を持つ海外の国の中では、パイプライン網を敷いて、天然資源を輸入している国もある。専用船を用いた洋上の運送に比べコストが割安な事がメリットだ。
天然ガスを専用船にて海上輸送する時は、液化、輸送、気化の工程を経る時に膨大なコストを要する。日本にも海底を通るパイプラインがある。
エネルギーは国境を越える
コンテナ不足や海上運賃の高騰、さらには海運会社が過去最高益を上げているニュースを目にすると、貿易は物品の売買をイメージしてしまうが、電力も世界各国の国にとって欠かす事のできない貿易品目一つを形成している。
電力を外国から輸入する国がある。エネルギー源の天然資源を輸入し、自国の発電所で発電するだけでなく、隣国から電力つまり電気を購入している国がある。
言い換えると、自国で発電した電力を、貿易品目として外国へ売電している国がある。
アジアにおいて、意外にもラオスの発電能力の高さと売電量の規模は、隣国への経済活動に影響を及ぼしている。中国資本と技術協力によって、メコン川上流域にダムを建設し、水力発電によって電力を生み出している。
シンガポールは、ラオスから電力を購入する事を決めた。ライスの水力によって発電された電気が、タイとマレーシアの2ヶ国を経て、シンガポールへ送電される。
EUにおいては、EU各国間において、電力の供給網が整備され、国境を越える電力貿易が確立されている。ベルギーは風力発電によって発電した電力を隣国へ売却している。スペインの風力発電は有名だ。フランスやドイツも電力を隣国に供給している国として有名だ。地域的な協力として、スイスは発電した電力を近隣のドイツ南部やイタリア北部へ供給している。低コストの電力を調達できることが、その国の社会インフラコストや工業製品の製造コストに直接的に影響するため、ヨーロッパ各国は、水力発電、太陽光発電、地熱発電、風力発電など、低コストで大量の電力を発電し、電気がヨーロッパ域内における重量な貿易品目の一つになった。
電力におけるシェアリングエコノミー
電力を国際間で売買する貿易の仕組みは、シェアリングエコノミーの一つとも言える。
現代においては、部屋や商業スペースなどの場所や空間、自動車などの乗り物、洋服やバッグなどのモノ、人が持っている固有のスキルをインターネット上のプラットフォームを介して、個人間や企業間つまり、BtoB、BtoC、CtoCにおいて「モノ」をシェアする新しい経済活動を、シェアリングエコノミーと呼んでいる。
シェアリングエコノミーは、資源を有効に活用する仕組みの一つであり、持続可能な社会の構築に役立っている。
電力を提供する国は、自国の地理的環境条件を基に水力や風力によって発電し、他国へ輸出する。他国の電力を必要とする国は、低コストで他国から電力を輸入する事によって、国内で発電する電力より割安に電力を消費できる。電力のシェアリングエコノミーは、関わる多くの国々にメリットを与える。
ヨーロッパ域内においては、電力のシェアリングエコノミーを進めるためのインフラは整いつつある。化石燃料が、SDGsの観点から改善が望まれている現代において、風力発電や水力発電などのサステイナブルな発電は、テクノロジーの進化によって実用的な電力として期待されている。
持続可能な社会を支える電力の輸出入
16世紀以前、エネルギーとは、火を基にした熱、馬や牛などの動物を基にした動力、さらに風車や水車のような自然の力を利用した動力であった。18世紀に、熱や蒸気を効率よく動力に変える仕組みの蒸気機関が発明されると、産業革命が起きた。19世紀には、電池が生まれ、電力が主要な動力へと変化した。効率よく大量の電力を生み出す化石燃料は、世界のあらゆる分野で産業発展を後押しした。化石燃料による電力は、大量生産、大量消費の経済構造を支えた。
電力のシェアリングエコノミーは、持続可能な社会において次世代を考えたエネルギーの供給と消費を可能にしている。風力発電、太陽光発電、水力発電によって作り出された電力が、必要とする国へ輸出される事によって、潜在的な資源が輸入国で消費される構造を創り出した。より少ないモノから多くを作り出すシェアリングエコノミーのコンセプトである、資源を倹約して使う事によって、経済的に豊かになる。国境を越える電力は、貿易分野におけるシェアリングエコノミーの代表格だ。
電力分野における輸出の可能性
日本は、海に囲まれた島国であるために、隣国から直接電力を調達、または販売する事はできていない。言い換えると、隣国との間において電力の輸出入は行っていない。
世界の各地域では、再生可能エネルギーを導入し、エネルギー分野におけるパラダイムシフトが起きている。自国で発電した電気を他国に売電する事によって収益を得ている。その収益を原資に、エネルギー分野における新たな産業革命を起こしている。エネルギー技術の先進国は、更に技術革新が促されている。一方で、日本は電力を他国に輸出する事ができないために、電力を自国から輸出する貿易の主要な品目として捉える企業はない。官民が一体となって財源を確保し、発電や蓄電関連の技術を競うように開発している他国と比べると、日本の電力分野における産業競争力は劇的な進化が見られない。世界の技術先進国から後れを取っている現実が、将来への負の遺産となってきている。
海に囲まれ四季がある、東西南北3,000km.ある日本は、多様な気象環境を保有している。気象予測のデジタル技術、災害に強いインフラ設備とその緻密な運営能力の構築など、日本が得意として行ける分野がある。電気そのものを輸出できなくても、その技術を他国に輸出する事で、電力分野においても貿易収支のバランスと取れる可能性がある。