中国華北エリアの中心都市「天津市 Tianjin」。
海上速達便サービスの拠点のひとつでもある天津市とはどんな都市なのでしょうか?
今回の記事では、中国の直轄都市の一つである「天津市」について紹介します。
中国華北地区の中でも物流や技術産業の中心都市として機能する天津市は、東に「渤海」、北に「燕山」、西に「北京」に隣接している中国の直轄都市です。常駐人口は1373万人(百度百科調べ)で、中国の直轄都市で最も少ない人口となりますが、それでも東京と同じ程度の人口がいることを考えると中国ならではの規模が感じられます。
天津市は昔から海上貿易が盛んな港町として知られており、2020年には貨物取扱量で世界8位になった天津港を擁する、中国を代表する港湾都市でもあります。
また、中国政府が推し進めている「一帯一路シルクロード」政策の戦略拠点であり、物流拠点の起点となっています。
街中には租界時代の面影を感じられるようなヨーロッパ風の建築物が立ち並び、中国国内でも人気の観光地になっています。
異国情緒ある風景が広がる天津市はどのような歴史をたどり成長してきたのでしょうか。
ここからは天津市の歴史、中国の主要都市からのアクセス経路や日系企業の進出状況について紹介していきます。
天津市がある場所はもともと海であり、太古の黄河の堆積物によって平原が形成されました。中国最古の王朝と言われる殷、周時代には人が住み始め、都市として形成されていきました。隋の時代(西暦581年 – 618年)に大運河が開通されると、港湾都市としての重要性が増し、港町天津市の原型ができあがりました。
天津市が国際的な港湾都市として本格的に機能するようになったのは1858年のアロー戦争(第2次アヘン戦争)が契機です。英仏連合軍に敗北、天津条約・北京条約が締結されたことにより天津港が開港。以後、天津港は北京の外港として急速な発展を遂げました。
その後、19世紀後半から20世紀前半にかけて発生した戦争の結果、天津市には相次いで租界(清国(後の中華民国)内の外国人居留地)が設置されます。イギリス、フランス、日本、ドイツ、アメリカ、ロシア、イタリア、ベルギー、オーストリア=ハンガリーと、天津市は中国で最も租界の数が多い都市となりました。
天津市の街中には、租界時代に建てられたさまざまな西洋風建築物が今でも残っています。天津市が中国国内でも有数の異文化を強く感じる街となっているのはこのためでもあります。
2021年の天津市のGDPは約1兆5000億元(日本円で約30兆円)となり、中国国内の直轄都市を含む主要都市のGDPランキングで10位に位置しています。トップは上海市の約4兆3000億元なので、上海の経済規模の大きさがうかがえますね。
日本のトヨタ自動車などが進出している関係で、街中を走るタクシーにトヨタ車が多いのも天津市の特徴と言えます。
東京商工リサーチの調査によると、天津市に進出している日系企業は約160社。業種別では製造業が約7割、中でも輸送用機械器具製造業、いわゆる自動車関係企業が多く占めています。中国の自動車関連産業の集積地と言われる天津市だけあって、トヨタをはじめとする日系自動車関連メーカーは積極的に進出しているようですね。中国での完成車販売台数は新型コロナウイルス流行前を上回る勢いで大きく伸ひており、サプライヤーの工場でも高い稼働率が続いているそうです。コロナ禍によるマイカー需要と、日本車の品質の高さがより認知されたという背景が影響しているようですね。
北京や天津は華北エリアの一大工業地帯であり、非常に幅広い業種が存在しますが、天津では「天津経済技術開発区」の開発等が進められており、大企業だけでなく今後は中小企業の進出対象地域となることも予想されているそうです。
渤海周辺に形成される経済圏・環渤海経済圏の主要都市でもある天津市は首都・北京からのアクセスが便利で、中国の高速鉄道を利用すれば30分程度で着く距離にあります。車で移動する場合は高速道路を利用すれば約2時間程度です。
ちなみに上海から天津市へ行く場合は2時間程度で行ける飛行機が便利ですが、時間制限がなければ上海虹橋駅から新幹線を利用して行く方法(約6時間)もあります。
日本からの直行便で行く場合は、東京、名古屋、大阪から定期便が出ています。天津市は北京からでも日帰りで行ける距離にあるので、北京観光ついでに天津市によるルートも人気のようです。
『天津市はどの辺りにある都市なのかいまいちよく知らないけど・・・天津飯とか天津甘栗とか有名だよね?』と思ったそこの方。実は残念ながら『天津飯』も『天津甘栗』も天津市の名物ではなく日本生まれのグルメです。
天津飯については諸説ありますが、天津港から輸入された材料を使って作られたから、というのがその名の由来のようです。天津甘栗についても同様に、天津港から輸出された栗を使って作られたため、天津の名を冠することになったのだとか。
いずれにせよ、原材料の輸出入という点で縁があることには違いありません。
天津から日本向けに輸出されているものとしてはソバの実もシェアが高いです。
ちなみに正真正銘天津生まれの名物といえば、『天津大麻花(麻花・マーホア)』です。練った小麦粉の生地を油で揚げ、砂糖や蜜などをまぶしたかりんとうに似た揚げ菓子で、長崎や横浜の中華街でも『よりより』『ねじりんぼう』などの名前で売られていたりします。日本でよく見かけるものは歯が立たないほど硬いですが、天津市ではサクサクと軽い歯ごたえのものが一般的なんだとか。味や触感、サイズなども豊富な『天津大麻花』、天津市に行ったらぜひ食べたいですね。
もうひとつ、天津と日本をつなぐ歴史をご紹介。燕京(YAN JING、イエンジン)という貨客船をご存じでしょうか。
1990年3月21日に就航し、2012年8月21日に運航が終了するまで、天津港(客船ターミナル)と友好港である神戸港(神戸ポートターミナル)とを結ぶ国際定期フェリーとして就航していました。
天津港とほぼ同時代、1868年に開港した神戸港。街中にレトロな西洋文化の香りを感じる点も、天津との共通点が感じられます。
天津港 から出港する船で輸入しているはずなのに、B/Lの Port of Loading にはなぜか Tianjin(CNTSN) ではなくXingang(CNTXG)と記載されているのが気になった方、いらっしゃいませんか?
天津新港(Xingang)は天津市内にあり、天津港よりもさらに河口側に新設された中国最大級の深水港です。単に新港と呼称する場合はほとんどこの天津新港を指します。
それぞれポートコードも異なる2つの港ですが、位置的に天津≒新港ということを理解しておけば実務上問題はないでしょう。